100日曼荼羅アート 89日目-蒲がまの穂
☆現在、まめぴよが迷い込んでいる物語
【古事記】
現存する日本最古の歴史書とされている書物。上・中・下の全3巻からなる。
和銅5年に太安万侶が編纂して、元明天皇へ献上された。
(青空文庫・現代語訳 古事記)
・・・そんな最古の書物に迷い込んだまめぴよは、どんな出会いをしていくのか……?
まめぴよはアレンジ&簡潔にしてしまった古事記を旅して進んでいきますので、ぜひ、現代語訳古事記の本自体を、お手に取ってみてくださいね!なるほども、残酷も、さまざまでたいへん興味深い内容でいっぱいです、ぜひ!
現代語古事記
【89日目】100日旅するまめぴよ 「古事記-9」因幡の白兎
浜辺
目を覚ますと、そこは、気持ちの良い浜辺でした。
波の音が響きわたり、遠くには島が見えます。
まめぴよは、浜辺を散歩してみることにしました。
波の押しては返す音と、足の裏に感じる砂の感触が心地よく、
まめぴよは、さらにてくてく歩きます。
しばらく行くと、少し先のほうで、何かがうずくまっていることに気づきました。
何だろうと思い、まめぴよはそちらへ近づいてみました。
皮を剥がれた兎
なんと、そこには、痛々しい姿でうずくまる白い兎が居たのです。
まめぴよ「兎さん、だいじょうぶ??」
白兎「うぅぅ、あなたはどなた?」
まめぴよ「本の外からきた、まめぴよです。」
白兎「なるほど、ちいさな旅のお方。わたしめの話を聞いてください、実は・・・」
と、兎が理由を語り始めようとしたところ、大勢の神々がそばを通りかかりました。
世代は変わって、スサノヲの六世代の孫、大国主命の話にうつります。
大国主命が、まだ若く大己貴神(オオナムチ)と呼ばれている頃のお話です。
オオナムチの兄弟は、八十神と呼ばれるほど、たいへん多くありました。
その末神がオオナムチです。
兄神たち八十神は、皆そろって、美しいと評判の因幡の国の八上比売へ結婚を申し込みに行くことを決めました。
列をなし、八十神たちは旅立ちます。末っ子であるオオナムチは、のけ者にされ、荷物持ちの従者として連れていかれることとなりました。
その道中、八十神たちは、海辺で泣く白兎を見つけたのです。
八十神たちは、傷だらけの兎に言いました
「海水を浴びて山に伏し、風を浴びれば、傷などすぐに癒えるであろう。」
八十神たちは、白兎に助言をすると、ぞろぞろと去っていきました。
白兎「まことに、ありがたいお言葉をいただきました。わたくし、海水を浴びてまいります!」
まめぴよ「傷に海水?海水は、塩水で消毒になるということ?でも……」
と、止める間もなく白兎は海へ飛び込んでしまいました。
そして、海水をたっぷり浴びた白兎は、
はりきって、浜辺からすぐの小高い山へあがっていき風を浴び始めました。
すると、白兎は、ふたたび泣きはじめたのです。
白兎「うわぁぁぁん!」
まめぴよ「ど、どうしたの兎さん!」
まめぴよは、小高い山にのぼった白兎にかけよりました。
白兎「海水が乾いて塩になり、風が体を引き裂くように痛いのです!」
まめぴよ「それは大変だ!!どうにかしないと……!!」
白兎「八十神たちに、だまされたぁ!」
と、そこへ、ひとり八十神たちがやってきた方向から、
ひとりの神がたくさんの荷物をかつぎながら、えっちらおっちらと歩いてくるのでした。
その神こそが、オオナムチでした。
まめぴよ「兎さん、待っていて!助けをお願いしてくるね!」
やさしいオオナムチ
まめぴよは、オオナムチに走り寄り言いました。
まめぴよ「お願いです!兎さんが、たいへん皮膚を傷めています、どうかお助けください!」
まめぴよは、白兎の居る小高い山へオオナムチを連れていきました。
オオナムチは兎に尋ねました。
「なんだって、こんなことになったのですか?」
白兎は、答えました。
「わたくしは隱岐の島にいて、この国に渡ってきたくとも、渡るすべがございませんでした。それですので、海に居る怪物・鰐をあざむこうと、こう言ったのです。『我々の一族と、あなたの一族、どちらが数が多いか競いましょう』、と。そして、海へ一列に鰐を並べ、その上を跳ね飛び、隠岐の島からこの国へ渡ってきたのです。しかし、鰐の最後の一匹のところで、『あなた方は、私にだまされた』と、笑ってしまったため、最後の一匹に捕まり、皮を剥がれてしまいました。そのあと、先ほどいらした大勢の神々に、海へ入って風に当たるよう教わり、その通りしたところ、このように体を壊してしまったのです。」
まめぴよ「兎さん、最後の一匹のところで、ホントのこと、言っちゃったんだね……。」
白兎「がまんができず、ついつい笑ってしまったのです。」
オオナムチ「まったく、なんと気の毒な兎であろうか。」
オオナムチは、優しく言いました。
オオナムチ「兎よ、まずは、沼へ行って真水で体を洗ってきなさい。そして、黄色い小鳥のあなたは、その沼の周りに生える蒲の花粉を集め、敷きなさい。兎はその上を転がり回るのです。そうすれば、もとの肌に戻れるでしょう。」
オオナムチに言われた通り、
兎は、沼に飛び込み真水で体を洗いました。
まめぴよは、たくさん蒲の穂を集め、兎のために敷き詰めました。
そして、兎は、ゴロゴロと穂の上を転がりまわり、蒲の花粉をたっぷり体に塗りました。
すると、みるみるうちに、元の肌に戻ることができました。
まめぴよ「わぁ、あよかった!!あっという間に治ってしまったね!」
オオナムチ「よかった、よかった。」
白兎「なんと、あなたは素晴らしいお方でしょう!!」
白兎は、オオナムチに言いました。
白兎「きっと、あの八十神たちは、八上姫を得ることはないでしょう。たとえ、袋をかつぎの従者でおられても、あなたは、八上姫を得られるでしょう。」
オオナムチについてゆく
たくさんの荷物を持つオオナムチが気の毒でならなかったので、
まめぴよは一緒に荷物を運ぶことにしました。
まめぴよ「兎さんのお礼もあるので、わたしも一緒に運びます。」
オオナムチ「どうもありがとう、まめぴよさん。」
オオナムチは、礼儀正しく優しい青年でした。
オオナムチが、八上姫の御殿に着くと、八上姫が八十神たちに申したことには、「わたくしは、あなたたちの言うことは聞きません。わたくしはオオナムチさまと結婚しようと思います。」ということでした。
まめぴよと、白兎は、こっそりお話をしました。
まめぴよ「八上姫さんは、オオナムチさんの優しさ、分かっているんだね!」
白兎「それは、もう!もちろんですとも!」
まめぴよ「でも、オオナムチさん、八十神さんたちに、いじめられないか、心配だね。」
白兎「それは確かに、大変心配でございますね。それより、あなた、そろそろお時間ですね!こちらを!」
白兎は、切り絵を差し出しました。
まめぴよは、お礼を言って切り絵を受け取り、新しいページに貼りつけ
次のページへ旅立ちました。
そして、もうひとつ。
まめぴよと白兎の心配は、そのとおりだったのです。
八十神たちは大変な計画を立てていました。
オオナムチと八神姫は結婚することとなりましたが、八十神たちは、そのことに、大変お怒りになりました。そこで、八十神たちはそろって、オオナムチを殺す計画を立てたのです。
伯岐国の手間の山(鳥取県西部)にて、八十神たちはオオナムチに言いました。「赤いイノシシがこの山に居る。我々が一斉に追い下ろすから、お前は待ちぶせしてそれを捕えろ。それを捕まえられぬときは、お前を殺すぞ。」と。
オオナムチはそれを了解し、言われた通り待ち伏せをします。そして、八十神たちは、山の上で大きな岩を焼いて真っ赤にすると、オオナムチめがけて、転がし落としました。
「オオナムチよ、イノシシが行ったぞー!!」オオナムチは、その岩が赤いイノシシだと思いこみ捕まえようとしましたが、焼けた岩で大やけどをして死んでしまいました。