100日曼荼羅アート 80日目-干し柿
☆現在、まめぴよが迷い込んでいる物語
【ゆずいなり】
ゆずという名の神使のキツネが、ある村におりたったときのおはなし。
・・・まめぴよの作りかけた未完成の絵本の世界のようですが…。
【80日目】100日旅するまめぴよ 「ゆずいなり-9」ゆずの村
初詣
気づくとそこは、雪景色の境内でした。
お日さまがのぼり、すっかり明るくなっています。
特別に飾られた拝殿には、列ができています。
境内には、お囃子が鳴り響き、たくさんの村人たちでにぎわっていました。
まめぴよ「初詣……?」
ゆずの小屋へ
まめぴよは、ゆずのいた小屋へ行ってみることにしました。
小屋をの戸を引いて、まめぴよは中をのぞきました。
まめぴよ「ゆずー……?」
小屋には、誰もいませんでした。
そこへ、村人が話しかけてきました。
村人「そこは、もう使われていないよ。きみ、よそから来たの?この村のこじゃないね?」
まめぴよ「はい、旅を、していまして……。」
村人「そうかそうか、ようこそ旅人!いい日に、この村に来たもんだなぁ!」
まめぴよ「あの、ここを使っていたキツネのこは、どこへ……?」
村人「あぁ、何十年も前に、ここに住み着いてたっていうキツネの話だね?」
まめぴよ「何十年も……??」
まめぴよは、ゆずから、ゆずの実を受け取った瞬間に
何十年も先の時代に着いてしまったようです。
村人「大みそかの夜、ゆずの入ったいなりずしで、病に伏したたくさんの村人たちが救われたんだって伝説だろう?」
まめぴよ「はい、そのお話の……。(よかった、あのおいなりで村の人たちを救えたんだ……!)」
村人「なんでも、ここに住み着いていたキツネが、村人が供えたものと、境内のありがたいゆずの実を使って、いなりずしをこしらえたそうなんだ。満月の光に照らさる、おいなりを運ぶキツネの姿は、それはそれは不思議なことに、夜空を駆けているかのように見えたんだとか!まぁ、それっきり、キツネが姿は見えなくなったんで、村では、そのキツネが命をささげたから、神さまが村人を救ってくれたという伝説になってるわよ。どうだい、なける話だろう?」
まめぴよ「約束をやぶってしまったんだ……。」
村人「まぁ、だから、この村では、元旦に境内でとれたゆずを使った”ゆずいなり”を配っているってわけだ。きみ、まだ、もらっていないだろう?拝殿の横で、もらえるよ!まぁ、ゆっくりしていきな!」
まめぴよ「はい、ありがとうございます。」
「じゃぁ。」と、その村人は去っていきました。
いろり
よくしゃべる村人が去ったあと、
まめぴよは、ぼんやりと小屋の入口に立ちつくしました。
まめぴよ「神さまとの約束、やぶってしまったから、体が消えて光となってしまうんだって、言ってたよね……。ゆずには、消えてほしくなかったのに。自分のせいで。。。」
まめぴよは、涙をぽろぽろとこぼしました。
そして、戸を閉めようとしたところ、
コトン
と、中から音がしたような気がしました。
まめぴよは、なんだろうと、ふたたび中をのぞき込むと
光が差し込んだいろりの横に、ゆらゆらと湯気ののぼる影が見えました。
まめぴよ「……どういうこと?」
まめぴよは、いそいで中に入り、いろりの横を確認しました。
おぼん
湯気の正体は、まめぴよの使っていた湯のみでした。
ゆずが、いつも麦茶を入れて運んでくれた時のまるいおぼんに、
麦茶の入った湯のみと、お皿に乗った干し柿がのっていました。
ゆずの淹れてくれた麦茶の香りです。
そして、まめぴよがつむじ風にさらわれ、食べそこねた干し柿も。
まめぴよ「ゆずなの??」
まめぴよは、あたりを見回しましたが、
あたりは静まり返り、だれも出てきませんでした。
まめぴよは、おぼんの横にしずかに座ると、
あたたかな麦茶をすすり、あまく柔らかな干し柿をつまみました。
黒い絵本
まめぴよは、カバンから黒い絵本を取り出しました。
黒い絵本は、もう黒さは無くなり、すっかり一冊の絵本となっていました。
その絵本『ゆずいなり』をペラリ、ペラリとめくって、
最後のページにくると、まめぴよは言いました。
まめぴよ「そうだよ。ゆずは消えちゃったり、しなかったんだ!」
大みそかの夜、ゆずが神使いの力を使って空を駆けたことは、
”神の命”で、神の供え物をおいなりにし運んだということ、
村人のために神使いの力を使ったわけではない、として、
神さまが、笑っている姿がありました。
もちろん、それを聞いてよろこぶ白キツネたちに囲まれる、おどろき顔のゆずの姿もありました。
まめぴよ「ゆずは、無事帰っているんだ。」
まめぴよは、『銀河鉄道の夜』の車掌さんに最後にかけられた言葉を思い出しました。
「きみの中の”本当の幸せ”、忘れず進んでくださいね。」
まめぴよは、絵本を閉じました。
まめぴよ「自分の心にたいせつなもの、手放すことないんだよね。」
ふとおぼんに目をやると、湯のみと干し柿はいつの間にか消えていました。
その代わり、おぼんの上には、一枚の切り絵が乗っていました。