100日曼荼羅アート 75日目-雨
☆現在、まめぴよが迷い込んでいる物語
【ゆずいなり】
ゆずという名の神使のキツネが、ある村におりたったときのおはなし。
・・・まめぴよの作りかけた未完成の絵本の世界のようですが…。
【75日目】100日旅するまめぴよ 「ゆずいなり-4」雨
樹上
つむじ風にさらわれたと思ったら、目の前にはたくさんの緑の葉っぱ。
セミの声が響きわたります。
そして、足もとはぶらぶら。。。
なんと、まめぴよは大きな大きな樹の枝に座っていたのでした。
まめぴよ「え?なんだここ!!」
ゆず「しっ!しずかに!気づかれちゃうよ!」
まめぴよ「……あれ?ゆず?」
まめぴよのとなりには、ゆずが座っていました。
ゆず「まめぴよ、ひさしぶり!」
ゆず「まめぴよって、雲使いじゃなくて、風使いだったの?」
まめぴよ「それって、なに?」
ゆず「田植えのあと、つむじ風で消えちゃったし、いまも風に乗ってやってきたから!」
まめぴよ「あ……。」
まめぴよは、この絵本の世界を作りかけたのがまめぴよであること、絵本が未完成であること、それが知れてはいけない気がして、あわててごまかしました。
まめぴよ「えぇと、まぁ、そうかな。それにしても、よかった!ゆずは、しゃべれなくなったわけじゃなかったんだね。」
ゆず「田植えのときはごめんね。村人たちとくちをきいてはいけない約束なんだ。だから、しゃべれること内緒にしてる。」
まめぴよ「……そっか、約束があるんだっけ。」
ゆず「うん。地上に降りるための、3つの約束のうちの、ひとつ。」
まめぴよ「え?3つも??」
ゆず「そう。いなりの大神様との約束は3つあるんだ。」
まめぴよの作りかけた絵本『ゆずいなり』には、まめぴよの知らないことも含まれているようでした。
絵本を作りかけたあと、知らぬ間に世界が進展したのか、それとも、まめぴよが心に思い描いていたことをまめぴよ自身が忘れてしまっているのか。。。
ゆず「ほら、まめぴよ。みんな、集まったみたいだよ。」
いのり
村人たちが、そろって、ひざまづき一生懸命に何かを祈っています。
まめぴよ「みんな、どうしたんだろう?」
ゆず「ここはね、稲荷の神社の拝殿前なんだ。」
……ゆずの話によると、
この夏は、日照り続きにより、田んぼの水が枯れ、稲が大変な状況にあるそうです。
そのため村人たちは、雨を願い、毎日いのりにきます。
まめぴよ「このままじゃ、稲が枯れてしまうね。」
ゆず「僕のなかまが、村人たちの声を天上に届けているはずだから、そろそろ雨の日がくるはずだよ。」
まめぴよ「そっか、よかった。ちゃんと声が届くんだね。」
ゆず「もちろんだよ!きっと龍の使いがやってくるよ。」
雨
そうこう話をしているうちに、
ひんやりとした大きな風が吹いてきて、
あたりが黒い雲におおわれて、雷がゴロゴロと鳴りはじめました。
そして、
ポツ、ポツと。。。
日照りで熱くなった土の上に、勢いよく音を立てて大粒の雨粒が落ちはじめ、
土のにおいが、まいあがってくるのを感じました。
村は、大雨にめぐまれました。
乾いた田んぼにも、土のひび割れに雨粒が染み入り、一気にうるおいを取り戻します。
ふたりのいる小高い山の上の大きな樹からは、
雨に包まれうるおう村が、とても良く見えました。
村人たちは、おおよろこびで家から出てきて、
雨の中楽しそうにおどっていました。
まめぴよ「よかったね!」
ゆず「これで、ひとあんしんだ。」
ふたりは、しずかに村を眺めました。
大雨の音が心地よく響きわたる村の景色は、
とても美しく見えました。
眺めているうち、音もなくつむじ風があらわれて、
まめぴよを包みこむと、ふわりと空へと消えていきました。