100日曼荼羅アート 71日目-暗黒星雲
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
☆現在、まめぴよが迷い込んでいる物語
【銀河鉄道の夜】
いじめられっこのジョバンニ、その親友のカムパネルラが、銀河鉄道に乗って様々な人と会ったり、冒険をするお話。その列車のいきさきは……?
【71日目】100日旅するまめぴよ 「銀河鉄道の夜」暗黒星雲
車掌室
目を覚ますと、そこは再び列車の中。
あたりをみまわしてみても、まめぴよのいる車両には乗客はいませんでした。
まめぴよは、誰か他にいないかと、前の車両へ移動してみることにしました。
いくつか、車両を移動しましたが、誰一人乗客は見当たりません。
そしてまめぴよは、ついには先頭車両までたどり着き、
車掌室の前に立っていたのでした。
車掌室
まめぴよが、車掌室の扉をノックしようとしたそのときです。
ガチャっと、扉が開き、中から車掌の帽子をかぶったペンギンが顔を出しました。
車掌「おや、ご用かな?」
まめぴよ「あ、あの、誰かいないか探していたところで……。」
車掌「いま、自動運転に切り替えたところでね。これから、乗客さんたちのチケットを確認しに行くところだったよ。」
まめぴよ「この列車に、まだお客さんはいるんですか?」
車掌「そりゃあ、いるともさ。サウザンクロスを過ぎたから数は少なくなるが、この先も乗客さんたちは、いらっしゃるよ。」
まめぴよ「この列車は、どこまで行くのです?
車掌「どこまでも、どこまでもいきますよ。どこまでもを繰り返すのです。」
まめぴよ「どこまでも……?」
車掌「もう少ししたらですね、光も、音も、時も、ない場所へ入りますよ。ほら、車掌室から窓の外をごらんなさい。あそこへ向かっているのです。」
ペンギンの車掌さんは、まめぴよを車掌室へ招き入れてくれました。
言われた通り、車掌室からのぞいてみると、ずーっと先のほうにまっくら闇がみえました。
濃紺の宇宙の空間の色も、星の光もないまっくらな場所へ線路が続いているのが分かりました。
まめぴよ「まっくろだ……。」
車掌「そう、あれはね、暗黒星雲。つまり銀河の穴ですよ。」
まめぴよ「なんだか、恐いですね……。」
車掌「恐がることはありません。何もなくなる場所なのですから。」
まめぴよ「あの中に入ってしまったら、列車は消えてしまうのですか?」
車掌「いいえ、列車はただただ線路の上を、走り続けるのです。」
まめぴよ「ずっと走り続ける……?」
まめぴよの切符
まめぴよは、ハッとしました
まめぴよ「ヒミツを知らないと、この本から出られないって、本当ですか?」
車掌「その話はどちらで?」
車掌は首をかしげました。
まめぴよ「列車に乗っていた乗客のひとから聞きました。」
車掌「あなたは、この本から実際に”出たことがないひと”の言うことを信じるのですか?」
車掌はニッコリと笑いました。
車掌「ところで、あなた、どちらまで?」
と、車掌は手を出しました。
「あ!チケット!」と、まめぴよは、カバンの中から、すこし焦げ臭いチケットを取り出しました。
まめぴよ「これって……。」
車掌は、まめぴよからチケットを受け取とると
まじまじとそのチケットをみて、うんうんとうなずきました。
そして、チケットをまめぴよに返し言いました。
車掌「きみの降りる場所は、もう、そろそろですね。」
まめぴよ「そろそろ……?」
まめぴよは、自分のチケットをよくよく見てみました。
焦げたような文字が刻まれていますが、知らない文字で読めません。
車掌は、ポケットから切り絵を取り出し、いそいそと、まめぴよに渡しました。
車掌「ほら、列車が暗黒星雲に入る前に、これで降りなさいな。」
まめぴよ「あ、切り絵で……。」
車掌「私は、乗客さんたちのチケットを確認しに行かなければ。」
まめぴよ「はい、ありがとうございました。」
まめぴよはペコリと頭を下げました。
車掌はドアのところで振り返り言いました。
車掌「そうそう、きみの中の”本当の幸せ”、忘れず進んでくださいね。」
そういうと、ペンギンの車掌は片手をふり、
ピョコピョコと去っていきました。