100日曼荼羅アート 78日目-雪
☆現在、まめぴよが迷い込んでいる物語
【ゆずいなり】
ゆずという名の神使のキツネが、ある村におりたったときのおはなし。
・・・まめぴよの作りかけた未完成の絵本の世界のようですが…。
【78日目】100日旅するまめぴよ 「ゆずいなり-7」冬
冬
気づくとまめぴよは、神社の境内に立っていました。
木の葉は散って、すっかり冷え込み、冬のようです。
ゆずは居ないようです。
村人が数人、拝殿でお参りをしていました。
お参りを終えると、何やら悲しそうなようすで、去っていきました。
まめぴよ「なにがあったんだろう……?」
と、思ったあと、まめぴよはハッと『ゆずいなり』の物語を思い出しました。
まめぴよが、途中で絵本を描けなくなった理由はここにあったのです。
絵本を作っている途中に、アドバイスをくれている知人から言われたのでした。
「この設定では、深みが感じられないわ。」
「物語には、命を落としたり、自己犠牲があるとひとの心にひびくのよ。」
そのため、物語を考えなおし、
村じゅうに、はやり病が広がる設定にしました。
そして、ゆずが村人たちを救うため、命をかけて、ある行動をとるのです……。
けれど、まめぴよは、そのストーリーを描くことにとても悩み、
その先を描けなくなったので『ゆずいなり』は未完成のまま本棚に眠りました。
まめぴよ「そうだ、『銀河鉄道の夜』では、サソリも、カムパネルラも、他者のために自分の命を使っていた……。自己犠牲は、ひとに望まれるものなの……?」
はやり病
そうこう考えているうちに、ゆずがやってきました。
まめぴよ「あ、ゆず!!」
ゆず「あ、まめぴよ。来てたんだね。寒かったでしょう?いま、お茶をいれるよ。」
ゆずは、がっくりと肩を落として、小屋に入っていきました。
まめぴよ「ゆず、だいじょうぶ?」
ゆず「いま、村を見てきたんだけれど、どうすることもできなくて……。」
ゆずは、鼻を真っ赤にして、いまにも泣き出しそうでした。
ゆず「実はね、先月に山を越えてきた旅人が、この村を通りがかったときに倒れたことがあったんだ。それから、看病をした村人たちが寝込んでいって。いまでは、村じゅうに、どんどんと広がってしまって……。村人たちが、毎日毎日たくさん祈っているのに、どうして倒れる人が増えていくんだろう。」
まめぴよは、やはりこの事態は、自分のせいだと思いました。
まめぴよ「ごめんね、ゆず!それは、自分のせいなの!絵本の中に、病の物語を入れたりしたから!!」
泣きそうなゆずを前に、まめぴよが、泣き出してしまいました。
ゆず「どうしたの、まめぴよ?まめぴよは、なにも、あやまることないじゃない。」
まめぴよ「でも、この世界は……!」
まめぴよが、絵本のことを告白しようとしたところ、さえぎるように、ゆずが言いました。
ゆず「だいじょうぶだよ。ほら、おいしい麦茶でも飲んで、落ち着いて。」
3つめの約束
ゆず「今日はね、ぼくがこの村に居られる最後の日なんだ。」
まめぴよ「最後の日?」
ゆず「うん、今日は、おおみそか。地上に居られる日、今日まで。村の人たちに良くしてもらったのに、何もできずに帰るなんて……。」
まめぴよ「稲を育てるのも、祭りを手伝ったりも、一緒にひとやすみしたりも、ゆずは、村の人たちのために、たくさんたくさんしていたよ!」
ゆず「実はね、神さまとの3つめの約束、”村人のために神使いの力を使ってはならない”って約束があって。だから、ぼく自身が直接ねがいを届けに行くことも、神さまを呼びに行くこともできないんだ。」
ゆずは、立ち上がり言いました。
ゆず「そうだ、もうひとつ、できること残ってた!」
ゆずは外に出て、拝殿の前へ行きました。
まめぴよ「ゆず、どうしたの?」
ゆず「拝殿で祈ってはいけないとは、言われてないよ!」
と、笑うと、拝殿に向かって祈りだしました。
ゆず「神さま、お願いです。どうか、どうか、村人のみんなをお助けください。」
まめぴよも、外に出て、ゆずと一緒に祈りました。
必至に必死にお願いしました。
しばらくすると、顔にひんやりと何かが触り、
目を開ける見上げると、たくさんのはなびらが舞うかのように、
空から、大粒の雪が、ゆらゆらと降ってくるのがみえました。
その雪とともに、切り絵もヒラリヒラリと降ってきました。
まめぴよは、その切り絵を、そっとつかみ取ると、
特別な本へ祈りを込めて貼りつけました。